先日、ある中堅企業の会長と話をしていたら、ある調査結果に呆れているという。その調査によると、日本と中共が尖閣で小競り合い(戦争)を始めた場合を想定すると、日本の一般女性のほぼ100%が、米国が護ってくれると信じているそうだ。どの程度信憑性のある調査か知らないが、世間知らずにも程がある。女性だけではない。男性の多くも日米安保が尖閣諸島に適用されるという米国のリップサービスを信じている。日本国民の劣化度合いを見せ付けられるにつけ、暗澹たる気分になる。
ヒラリー・クリントン米国務長官も、R・アーミテージ氏、M・グリーン氏、J・ナイ氏、K・キャンベル氏、K・メア氏などの錚々たる知日派の元外交官の学者たちも、尖閣に日米安保が適用されると公言しているが、腹の底では日中の諍いになど巻き込まれたくないと思っている。知日派=親日派ではないから、当然米国の国益を優先して、迷わず日中の諍いに巻き込まれないような行動をとるだろう。真価を問われる瀬戸際に立たされれば、日米安保など簡単に有名無実化(消滅)する。
民主党の米大統領候補ヒラリー氏は、夫のビル・クリントン氏がアーカンソー州知事時代から中共の裏献金に塗れており、間違いなく親中派である。そして、知日派、自称親日派の学者たちの本性は、実は寧ろ反日派である事を忘れてはならない。ドナルド・トランプ共和党米大統領候補が、日本と韓国に核を持たせるなどと口走ったが、彼は国際政治に無知なだけである。米国支配層の方針にも無知である。2005年8月から2006年12月まで米国の国連大使を務めたジョン・ボルトン氏も、数年前に日本の核武装を容認するかのような発言をしたが、こういった意見は極めて少数派であり、米国の国際戦略に携わる主流派からは相手にされていない。
米国の主流派を占め、且つ尊敬を集めるリアリストの学者であるジョージ・ケナン氏は日本封じ込め政策を推進した学者であり、「文明の衝突」の著者ハンチントン氏は、米国に自国防衛を依存する日本を見て「日本は何れ中共の属国になる」とまで断言した。ハンチントン氏には米国が東アジアから手を引く未来が見えていたのである。安倍政権が、可視化されつつある近未来を直視しないのは、日本国民にとっては甚大な悲劇の予兆である。未だに来たるべき苦難(自主防衛に対する米国の経済制裁)に備えない安倍政権はボンクラ政権である。多少なりとも先見性があればTPPでコメの輸入量・関税などで譲歩などできない筈である。
知日派で且つ親日派であると多くの親米保守が信頼を寄せる前述したカート・キャンベル氏は、「日米同盟を強化せよ。日本に軍事費を増加させるな。日本には他のアジア諸国と軍事同盟を結ばせるな。日本に自主防衛をさせてはいけない」と2003年の論文で主張した。1990年に沖縄海兵隊総司令官スタックポール将軍がワシントン・ポストのインタビューに答えて『我々は日本の再軍備を決して認めない。米軍が日本に駐留しているのは瓶の蓋で押さえ付ける為に居るのだ』と本音の発言をしたのを日本人は忘れてはいけない。これが米国の対日戦略の要諦なのである。
これは大東亜戦争が始まる4箇月前に当たる1941年8月にニューファンドランド島沖で、米大統領F・ルーズベルトと英首相W・チャーチルが、「戦後は永久に日本を武装解除する」と密約した頃と基本的には何も変わっていない。この二人はまだ始まってもいない戦争後の日本統治をあれこれ相談していたのだ。
1971年に中共の周恩来首相と国家安全保障担当米大統領補佐官H・キッシンジャーが、日本に米軍が駐留するのは〈日本に再軍備させない為だ〉と明言したのは、30年前に決定した日本の処遇を再確認したに過ぎない。フォード政権とジョン・H・W・ブッシュ政権で国家安全保障担当米大統領補佐官を務めたB・スコウクロフト氏は、1991年に「日本は米国の〈仮想敵国〉であるから軍事的に封じ込め続ける」と明言している。日本国民の米国に対する友愛の情は片想いなのである。未だに日本は米国の〈仮想敵国〉なのであるから。
1991年といえばソ連邦が崩壊した年であり、日本ではバブル景気が弾けた年である。翌年の1992年2月に公開された、米ディフェンス・プランニング・ガイダンスには、「日独両国には地域のリーダーシップと雖(いえど)も与えてはいけない」と明記されている。以上述べてきた事は、現在では機密文書でも何でもない。ネットで検索すれば誰でも容易に辿り着ける真実である。従って長年政権与党であった自民党の国会議員が知らない訳が無い。知らないとしたら国会議員に相応しくない無能振りである。恐らく米国に追従していれば何もする必要がなく楽だから、自民党議員たちは腑抜けて居るだけなのだろう。民主党政権は論外であったが、自民党政権もまた日本の未来を預けるに値しない政党である。
米国の一極支配は今、米国と親米保守・拝米右翼の儚い夢と消えた。世界は、〈米国・ロシア・中共・欧州・インド〉の五極支配構造に数年を費やして変わろうとしている。この五極支配構造では、日本は中共の属国としてしか生きて行けない。できるものなら我が日本も主権国家として世界構造の一極を占め、第六極目として、世界平和に貢献できる誇りある地位を獲得したいものである。
併し、その為には、自主防衛ができる主権国家になる必要がある。核武装を含む自主防衛を我がものとし、そこに至る苦難の道乗りを乗り越えて行かねばならない。再三投稿してきたが、日本が〈報復核〉を持つ事には米国や中共が猛反対するのは目に見えている。日本国民は、米国とその友好国、及び中共の熾烈な経済制裁を覚悟しなければならない。嘗てのABCD包囲網の再来である。
何もしないで中共の属国になるのも、行動を起こして経済制裁を受けるのも、日本国民には苦難の近未来である。どちらが悲惨かといえば、中共の属国若しくは自治区になる方が悲惨であろう。平和に慣れ切った日本国民には想像を絶する未来が待ち構えている。座して苦難を受け容れるのではなく、行動を起こすのであれば、米中の経済制裁に備えなければならない。私が再三にわたって〈エネルギーと穀物〉の自給率を100%にしなければならないと主張するのは、来たるべき国際社会からの経済制裁を乗り越える為の備えが必要と考えるからである。
それを実行するに当たっての最大の障壁は、米国でも中共でも無く、平和呆けした〈日本国民の意識〉である。日本の安全保障に資する「集団的自衛権」を〈戦争法〉などと呼ぶ日本共産党 他の野党の口車に乗って、在日などと一緒に反対運動をしたり、運動をしないまでも考えを同じくする〈愚かな日本国民の意識〉こそ、〈日本が生き残る〉為の最大の障壁である。
何も殊更 米国に逆らい楯突く必要はないが、日本国が日本国として生き延びる為には、主張すべきは主張していく必要がある。嘗てインドは、「日本が核実験をするなら、実験する場所を提供する」とまで申し出てくれた。現在ではスーパーコンピュータのシュミレーションで事足りると言われているが、インドの申し出を受けるのは、インドとの絆を深める良い機会かも知れない。この件に関しては米国は日本の敵国である。米国自身が日本を〈仮想敵国〉と見做しているのだから。日本とインドは互いを必要としている。世界から孤立した日本にとってインドは貴重な同盟国になる事だろう。
繰り返すが、〈最大の問題は日本国民自身に内在〉する。冒頭述べた「日本の一般女性のほぼ100%が、いざとなったら米国が護ってくれると信じている」という現実である。一般女性に限らず、日本国民の大部分が持つ〈戦争アレルギー〉〈核アレルギー〉が最大の問題である。彼等の〈戦争や核兵器を憎む気持ち〉は私も共有する。考え方の異なりは、唯一〈報復核〉のみが日本を外敵の悪意ある行動を抑止し、日本に平和と安定を齎すと考えられるかどうかという一点である。
街に拳銃で武装した警察官が必要なように、我が家の玄関や窓に鍵を掛けるように、犯罪を防ぐには〈備え〉が必要だという事を理解する事が必要だ。無条件で世界をパトロールしてくれる国家が居ないならば、近隣諸国に恵まれない日本は、独自に自国を護る必要があるという事だ。日本は東西冷戦という偶然の幸運が齎した米国の庇護が終わった事を受け容れなければならない。自国防衛という、他国が当然の事として受け容れている負担を、駄々っ子のように嫌がって居られる時代は既に終わっているのである。